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『いのちをいただく』

 本書が出版されたのは1年前の2009年5月だが、最近まで存在を知らなかった。家族そろっての夕食で、「来週、おばあちゃんのお墓参りに行く」という話が出たときに、10歳になる娘が「人が死んだら魂はどうなるの? 天国に行くの?」と質問してきた。

 なかなかの難しい質問に、普段はいい加減なお父さんも、こんな時はいい加減な言葉でごまかしてはいけない、と思いながら、「実際、人が死んでからのことは誰も知らないんだよ。でも人によっては魂は天国に行くという人もいれば、何かに生まれ変わると信じている人もいる。それはその人が信じている宗教によっても違うんだよ。仏教では輪廻転生といって、あの世にいった魂が、何度も生まれ変わってこの世に帰ってくる、という考え方があるよ。そういえば手塚治虫の『火の鳥』では、死んだら自分とは違う種類の動物に魂が移っていき、何代も移り変わるうちに、もともとの魂の記憶がなくなっていく、というお話もあったよね」と、やっぱり最後はマンガの話になってしまった。

 でも、「人々や民族によっては、全ての植物や動物に神様が宿っていると信じている人たちもいるよね。その人たちは狩りをする時は神様に『自然の恵みを与えて下さい』とお祈りし、獲物を獲ったらやはり神様に感謝する。そして、獲物を解体したり食べたりするときには、獲物の魂に『自分たちに命を捧げてくれてありがとう』と、感謝のお祈りをするんだよ。どんな生き物にも命と魂があることを大事にしているから、むやみに生き物を殺したり、必要以上に獲物を獲ったりしないんだよ」と、付け加えた。

 墓参りからはだいぶそれてしまったが、7歳と4歳の子どもも加わり、命や魂、動物といったキーワードで、話はあっちこっちに飛んで行き、賑やかな夕食となった。それまで、ニコニコと子どもたちの話を聞いていたお母さん(私のカミさんです)、食事が終わるタイミングを見計らって「君たちにいいお話を聞かせてあげる」と言って持ってきたのが、『いのちをいただく』だった(前置きが長くてスミマセン)。

 熊本県の食肉加工センターに勤務する坂本義喜さんの体験談を基にした絵本で、小学校の授業参観をきっかけに、解体作業の仕事について坂本さんと息子のしのぶ君が語り合う場面から、ある日、牛をセンターに運び込んできた女の子の家族との出会いへと展開していく。味わいのある方言と、諸江和美さんの絵が、物語を豊かにしてくれている。

 著者の内田美智子さんは助産師で2500人以上の赤ちゃんを取り上げ、命の誕生の瞬間に立ち会ってきた人だ。彼女が小学校に依頼された講演に出向いたときに、彼女とは違う立場から子どもたちに「いのち」についての話をする坂本さんに出会った。自分の講演の前に坂本さんの話を聞き、ボロボロと涙が出てきたという。

 実は、私もカミさんが娘たちに読み聞かせているのを聞いているうちに、目がウルウルしてしまった。子どもたちは真剣に聞き入っている。親父が一人目を赤くしていたのではシマらない。ビールを飲み、新聞を読むふりをしながら顔を隠していた。

 わが家と同じくらいの子どもには是非読ませてあげたい。それ以上に、子どもを育てる親にこそ読んでもらいたい一冊だ。

 

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   『いのちをいただく』(西日本新聞社)
    著者 内田美智子 諸江和美
    監修 佐藤剛史
    A5判変型/1,260円

日時:2010年08月06日11:59

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